講座・研修

【レポート】いわてグローカルカレッジ 第4回「在住外国人をめぐる法律問題 ‐多文化共生社会を考える‐」

主催: (公財)岩手県国際交流協会

2011年10月30日(日)  会場: アイーナ5階 501会議室

■概要

 □ タイトル: いわてグローカルカレッジ
  第4回「在住外国人をめぐる法律問題 ‐多文化共生社会を考える‐」
 □ 日時: 2011年10月30日(日)14:00~16:00
 □ 場所: アイーナ5階 501会議室
 □ 講師: 早川 智津子 氏(岩手大学国際交流センター准教授)


■レポート

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 岩手大学国際交流センターの早川 智津子准教授に「在住外国人をめぐる法律問題 -多文化共生社会を考える-」と題して講義をしていただきました。
講義の要旨は次のとおりです。



外国人労働者の観点から、外国人労働政策を主な研究テーマとしている。
法制度としての入管法、外国人雇用に係る労働法、外国人労働者の部分で事例紹介、大震災と外国人とのかかわりについて話をする。

日本と岩手の現状
 日本の人口問題、国立社会保障・人口問題研究所が2006年に出した人口予測の中位予測では2005年の1億2千7百68万人が2055年には9千万人ぐらいに純減するという予測である。15歳から64歳の労働年齢人口が激減し、2005年は8千400万人から2055年4千60万人ぐらいに落ちるのではという予測である。2010年の国勢調査の数では1億2千8百万人だったので2006年の中位予測より楽観的な数字だった。
 1935年から2055年までの人口グラフでは、第1次・第2次ベビーブームの山があり、あるのではないかと言われていた2000年の第3次ベビーブームがこないまま日本は少子化に突入した。2055年になると、高齢化が進んで人口規模が小さくなるという予測である。 このような現象は日本だけでなく、米国を除く先進国ではほぼ少子化傾向が進んでいる。米国は南米出身者が人口を支えている。ヨーロッパ、中国、韓国、台湾では深刻な人口減少にあるといわれている。そのような観点から、日本の政策の中で外国人の受け入れを考える動きが2000年ごろからあった。外国人登録者数は、2008年までは右上がりで伸びている。ピークを過ぎると2009年から2010年の2年連続で減少している。
 2010年末の外国人登録者数では213万人となっていて、国籍別として以前は韓国・朝鮮国籍の方が多かったが、それを抜いて中国がトップ、以下、韓国・朝鮮、ブラジル、フィリピン、ペルー、米国といった順になっている。
岩手県では、県人口133万人に対して岩手県の2010年末外国人登録者数は6191人、震災後の外国人登録者数では5257人となっていて、国籍別では中国がトップ、韓国・朝鮮、フィリピンの順となっている。ブラジルの方が以前はフィリピンについで多かったが、2007年からのリーマンショックの影響でブラジルは激減した。それに対して、ベトナム、インドネシアは伸びている。

入管法
 外国人の出入国と難民認定を管理している法律は入管法である。平成21年に大きな改正があり、その一つは在留資格制度の中に新たな在留資格、技能実習が創出されたことである。新たな在留管理制度は、来年の7月からの実施が予定されている。従来の外国人登録制度が廃止され、外国人登録証に変わり在留カードの発行に代わる。併せて、外国人台帳を住民基本台帳の中で作っていくことになっている。これに伴い、従来は在留資格のない外国人でも外国人登録証明書が発行されていたが、今回の制度になると在留資格のない人には発行しないこととなっている。
 なぜ、このような法改正が行われたかというと、外国人登録制度は、実際の外国人の居住状況を把握していないのではないか、特に南米ブラジル人日系人が多く住む自治体では、外国人登録制度が破たんしているという声が多くあったことによる。外国人登録者数がどの程度正確か、確かではないこともあり、新たな制度のもとでは正確につかめるようになるのではないかと言われている。国勢調査の外国人人口と外国人登録者数の数字がすごく乖離しているので、新たな在留管理制度のもとで外国人に関わるいろいろな情報が集められるようになると思われる。
 また、不法就労の防止に関わる条項が一つあり、不法就労助長罪、つまり、不法に滞在する外国人を雇ってはいけない、雇った場合は不法就労助長罪という罰が科せられるようになる。改正前は、分かっていてやった、知りつつやった、知るべきであったのに確認していなかった重過失の場合は罰が科せられたが、知らなかった場合は罰則の適用はないという解釈であったが平成21年の改正で、来年からこの制度がスタートすると不法就労助長罪の要件が変わり、過失も含まれることとなり、うっかり在留資格のない外国人を雇ってしまった場合、在留資格の確認をしなかったことで過失となり、不法就労助長罪が適用になる条文となっている。
 新しい在留資格における留学は、従来の日本語学校に通う就学生と大学で学ぶ留学生が一つの在留資格となる。
 ~身分と地位に基づく在留資格は、就労の中身について問わない。他の在留資格は、就労により別れている。就労できない在留資格があるが、資格外活動許可を取る事により時間制限等のなかで働くことができる。昨年度末の日本の在留資格別の割合では、18%が特別永住者、1/4ほどが永住者、他には日本人の配偶者等や定住者となっていて、高度専門職の在留資格を持った外国人は多くない。
 新たな入管法の中で、技能実習制度も新しくなっており1年目は研修、2~3年目は技能実習となり技能実習の際には雇用関係のもとでの身分というのが従来の制度であった。なので、1年目の研修のときは労働法が適用になっていなかったので、様々な問題が起きた。この問題について放置することができない状況となり、改正により技能実習とすることとした。

労働法
 雇用対策法は平成19年の改正において、国の施策として専門技術的分野の外国人の就業を促進していく、外国人の雇用管理を改善する、離職した場合の再就職の促進を行う、という条項を含めた。そして、不法就労の防止策、事業主に対して外国人雇用管理の改善を努力すること、事業主の都合により解雇する場合には再就職の支援に努めるようにとも定められている。さらに、外国人雇用状況の届出制度が罰則つきで義務付けられた。外国人労働者を雇用する事業主の責任が強化される中で、国として外国人労働の雇用管理の改善について事業主が適正に対処するための指針を策定している。
 ハローワークを窓口に外国人状況が届けられており、厚生労働省がとりまとめた数字として外国人労働者数64万9千人程度となっている。ただ、個人的見解としては届出数が少ないように感じている。おそらく、大きくみると90万人ぐらいは働いている外国人労働者がいるのではないかという考えである。

多文化共生の推進
 多文化共生という言葉は川崎市の施策の中で使われ始め、阪神淡路の震災時を契機に多文化共生という言葉が多く使われるようになった。最もフォーカスがあたったのは日系人問題、日系ブラジル人、ペルー人などが多く住んでいる28都市が加入している外国人集住都市会議が国に対して様々な施策の提言をしたことによる。地域住民との摩擦や子どもの不就学、社会保険の未加入など問題に対する懸念を都市間で話し合っている。また、県レベルで行っている多文化共生推進協議会も国に訴えかけていく中で総務省が2006年に地域における多文化共生推進プランについて各自治体に通知し、様々な地域で多文化共生のプランが策定されてきた。岩手県でも、多文化共生推進プランが昨年の2月に策定されており、平成22年度から平成26年度までの5か年にわたってのプランとなっている。施策の方向性として、コミュニケーションの支援、生活支援、多文化共生の地域づくりの3つとなっている。

労働法問題から考える
 あるべき法政策のアイディアとしては、外国人政策は労働法の他にも、社会保障法、教育問題にかかわる法律、住民に関わる部分、住居や医療など様々な分野が一体になっているべきである。入管法と労働法は交錯し、共に影響をしあうことが望ましいと考える。外国人政策は2つの側面がある。一つは、日本にとって好ましい外国人だけの入国をコントロールする入管法の選択理念と負の側面としての排除的な法律が入管法ではないか。労働法は統合を図っていく、日本人と外国人の間に不合理な差別を設けないようにする統合を担うのが、外国人労働という部分においては労働法の役割と考える。


■報告日:2011年11月13日