講座・研修

【レポート】いわてグローカルカレッジ 第2回「ユネスコ思想と平泉の世界遺産」

主催: (公財)岩手県国際交流協会

2011年10月01日(土)  会場: アイーナ5階 501会議室

■概要

 □ タイトル: いわてグローカルカレッジ
  第2回「ユネスコ思想と平泉の世界遺産」
 □ 日時: 2011年10月1日(土)14:00~16:00
 □ 場所: アイーナ5階 501会議室
 □ 講師: 大矢邦宣氏(盛岡大学文学部社会文学科教授)


■レポート

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 2011年10月1日(土)、当協会主催の「いわてグローカル・カレッジ」第2回講義「ユネスコ思想と平泉の世界遺産」を、盛岡大学文学部社会文化学科教授の大矢邦宣先生に講義をしていただきました。

 ユネスコは戦争が契機として設立されました。ユネスコ憲章前文の日本語訳文においては、“無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。”とありますが、“無知と偏見を通じて人間と人種の不平等が戦争をもたらした。”とすることでわかりやすくなります。
 「みちのく」は“道の奥”、“東山道の道の奥”であったので都からすると“知識がない”、“未知の国”=無知だったために、偏見が生まれ、そのために富の不平等が起り、争いが絶えませんでした。「みちのく」が置かれていた状況を変えようとしたのが平泉です。ユネスコの精神を900年前に実現しようとしたのが平泉であるので、世界遺産となるのは当然と考えます。
 世界遺産として評価されたことは、“平泉は「この世に浄土」を表現”、“平泉は「自然美の浄土」”、“平泉は、最も進化した浄土庭園”、“平泉は日本各地に影響を与えた”ことです。日本人は「浄土」の意味を偏って考えており、「浄土」は「あの世」ととらえていますが、平泉の価値は「この世」の「浄土」です。建築物としての金色堂と浄土庭園としての毛越寺は、現世における仏国土、浄土を象徴的に表しています。

 金色堂は「この世に浄土を再現」しています。金色堂の漆芸技術は美術的価値が高く、平安仏教美術の至宝といわれています。金色堂は徹底した「光」の聖堂で、“光で満たし尽くして”います。光で悪魔を遠退け、清衡、基衡、秀衡の遺体を保存しようとしています。遺体を保存することで、弥勒の世において復活し、復活した世での浄土づくりを願っています。

 福島の白河関から青森の外ヶ浜までの中間、“みちのく中央の尊い寺”として中尊寺を造り、現世・娑婆・人間世界の教主を現した釈迦の寺です。現在、本尊として一般的に考えられている阿弥陀如来は焼失を免れ残ったもので、新たな釈迦像を本尊として造顕しています。釈迦のもとでは、はじめから、みな平等であり、それは法華経の根本精神と通じています。
 平泉は都文化と独創性・先進性を併せ持っており、その超一流の文化により、差別・蔑視、収奪、征夷・征伐の構造から脱却することが悲願であったと考えます。これは、ユネスコ憲章前文にある「無知」と「偏見」と「不平等」によって戦争は起こったことに通じています。

 世界遺産のマーク(参照:UNESCO World Heritage Convention)は、外側の円は自然を、中の四角は文化・人間の創造物を表しており、それぞれが一体となってつながっていることを意味しています。
 世界遺産の価値は、世界にとって顕著な普遍的価値、完全性・真実性と最近の傾向としての管理保全があげられ、管理保全は特に厳しく求められています。
 世界遺産の評価基準として、傑作、交流、物証、類型・見本、土地利用、関連のうち一つ以上満たすことを求められていますが、平泉は交流と関連の2つを満たしています。

 インドや東南アジアの寺院の池にあらわされるように、浄土の池は四角い池です。日本では日本人の考えで仏教が変質し、自然景観の曲池となりました。自然美の浄土、和風浄土として平泉は最も進化した浄土庭園といえます。
 「浄土庭園」は日本で創られ、平泉で完成したと考えます。毛越寺は「自然美の浄土」であり、「この世の浄土」をあらわしています。

 金鶏山は、まだ理解されていないが重要であると考えます。平泉の中央に位置し、弥勒下山の山として平泉を理解するためにキーポイントとなっているからです。弥勒下山のとき、金のみならず、にわとり(夜明け)の山(金鶏山)に清衡は復活し、みちのくを「浄土」とすることを願ったと考えます。

 平泉は「浄い仏国土」であり「国土を浄める」浄土であると考えます。浄土造りは光であり、三陸の「復光」の象徴です。



■報告日:2011年10月4日